肩甲骨骨折

肩甲骨々折 (けんこうこつこっせつ)

肩甲骨は、背中側の肩の部分についており、骨の中でも比較的薄い板状骨です。

他の骨とは、関節を形成しておらず、他のどの骨よりも自由に動かすことのできる骨です。

外力に弱い構造ですが、多くの筋肉群に囲まれて補強されています。

①肩の後方部分に、経験したことのない激痛が走る、

②肩の後方部分が青黒く変色している、

③肩・肘を全く動かすことができない、

この3要件が揃ったら、肩甲骨は骨折しています。

肩甲骨の骨折は、肋骨が邪魔をしてXPで読み取りにくいです。

CT画像

交通事故では、地面に肩から叩きつけられる、肩甲骨に直接的な打撃を受けて、骨折しています。
多くは、肩甲骨体部の横骨折か、縦骨折ですが、直接に打撃を受けたときは、鎖骨骨折、肋骨骨折、肩鎖靱帯の脱臼骨折を合併することが多いのです。
肩甲骨々折で手術をすることは少なく、三角巾、ストッキネット、装具等で3週間程度の肩を固定する、保存的治療が選択されています。
その後は、振り子運動などの軽いリハビリ、温熱療法=ホットパックの理学療法が実施され、肩甲骨単独の骨折であれば、後遺障害を残すこともなく、多目に見ても、3カ月程度の治療期間です。

関節窩頚部骨折 で鎖骨骨折を合併すると、不安定性が生じるので鎖骨の内固定が行われます。

関節窩関節面骨折で骨片が大きいときは、反復性脱臼を予防するために、烏口突起骨折で肩鎖関節脱臼を合併したとき、肩峰骨折で肩峰が下方に転位したときと肩峰棘骨折の基部より外側の骨折ではオペが選択されています。

肩甲骨骨折における後遺障害のポイント

①肩甲骨の体部単独骨折、つまり関節外骨折では、大多数が保存的治療であり、長くても3カ月程度の治療で、後遺障害を残すことなく、改善が得られています。
しかし、肩甲骨の横骨折で、骨折部に軋轢音が認められ、骨折部の圧痛と肩関節の運動制限で12級6号が認められた例があります。
やはり、予断は禁物で、骨折部の3DCTをチェックし、丹念に精査をする必要があります。

②右肩甲骨体部横骨折、右肋骨骨折、右鎖骨遠位端骨折の例では,右鎖骨遠位端骨折は、AOプレートで固定され、変形を残していません。 しかし、この被害者の方の右肩関節は拘縮をきたしており2分の1以下の可動域制限がありました。
リハビリ開始が遅れたことにより、筋力低下が進み、右肩関節の挙上運動に制限が生じたのです。
骨折部の3DCTでは、良好な骨癒合が得られており、大きな変形は認められません。
被害者請求の結果、10級10号ではなく、1ランク下の12級6号が認定されました。
リハビリ開始の遅れによる、右肩関節の拘縮は、被害者の責に帰すべき事由と判断されたのです。

別の事例では,普通乗用車の助手席に同乗中の事故では、右折中に、対向直進車の衝突を受け、傷病名は、左第2~6肋骨骨折、左肺挫傷、左鎖骨遠位端骨折、左肩甲骨骨折、左第3~6肋骨骨折で、フレイルチェスト(肋骨が複数折れていること)となっていました。
治療は、集中治療室、ICUにて、気管挿管で陽圧人口呼吸管理が続けられました。
左肺全体に肺挫傷をきたしており、主治医も酸素化が維持できるかを懸念していたのですが、2週間で抜管できるまでに回復、受傷から6カ月で症状固定、左鎖骨遠位端部の変形で12級5号、左肩関節の運動制限で10級10号、併合9級の認定となりました。
陽圧人口呼吸管理によるフレイルチェストの治療が優先されたことにより、左肩関節の可動域に2分の1以上の運動制限を残したもので、これは救命の観点から、やむを得ないと判断されたのです。

③鎖骨の遠位端骨折、肩鎖靱帯の脱臼骨折、肋骨骨折に合併して肩甲骨を骨折することが圧倒的ですから、肩甲骨骨折に拘ることなく、肩関節全体に視野を広げて、後遺障害の検証を進めていく必要があります。

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