過換気症候群 (かかんきしょうこうぐん)

胸部の外傷で紹介する傷病名の中で、もっとも軽傷なもので、後遺障害を残すこともありません。

 

ヒトが生きるには新鮮な酸素が必要であり、呼吸によって吸い込んだ酸素は全身を巡り、
細胞の中で消費されて二酸化炭素となり、肺から呼吸によって吐き出されています。
つまり、呼吸とは、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことなのです。

さて、過呼吸とは、呼吸が速く、浅くなることですが、この発作を目の当たりにすると、
間断なく息を吐き続けるのですが、息を吸うことを忘れてしまい、
白目をむいて倒れるような印象です。

つまり、ヒトが無意識に行う、自然な呼吸のパターンが崩壊している状態なのです。

過換気症候群とは、精神的な不安を原因として過呼吸になり、その結果、息苦しさ、
胸部の圧迫感や痛み、動悸、目眩、手足や唇の痺れ、頭がボーッとする、死の恐怖感などを訴え、
稀には失神することもある症候群のことです。

当然ですが、放置しておいても、この症状で死に至ることはありません。

几帳面で神経質な人、心配症であり、考え込んでしまう人、10~20代の若者に多いとの
報告がなされていますが、私が経験しているのは、全て30~40代の女性で、交通事故受傷後に、
非器質性精神障害である不安神経症やパニック障害の診断がなされている被害者に限定されています。

医学的な考察を行うと、過換気症候群では、呼気からの二酸化炭素の排出が必要量を超え
動脈血の二酸化炭素濃度が減少して血液がアルカリ性に傾き、そのことによって、
息苦しさを感じるとされています。血液がアルカリ性に傾くことを、医学では、
呼吸性アルカローシスと言います。

そのため、無意識に延髄が反射し、呼吸を停止させ、血液中の二酸化炭素を増加させようと
するのですが、大脳皮質は、呼吸ができなくなるのを異常と捉え、
さらに呼吸を続けるように命じます。

この繰り返しで、血管が収縮し、軽度では手足の痺れ症状、重度であれば筋肉が硬直します。
それらが悪循環を続けると、発作がひどくなってくるのです。

先に、対処方法としてペーパーバッグ法を説明していますが、現在は、誤った処置とされています。

呼吸の速さと深さを自分で意識的に調整すれば、2~3分で、症状は自然に治まります。
万一発作が起きたとき、周囲の人は、なにもせず、安心しなさいと、被害者を落ち着かせた上で、

①息を吐くことを、患者に意識させ、ゆっくりと深呼吸をさせる、

②吸うことと、吐く比率が、1:2を目指して呼吸をさせる、

③一呼吸に、およそ10秒で、少しずつ息を吐かせる、

④胸や背中をゆっくり押して、呼吸をゆっくりするように促す、

上記の呼吸管理で、二酸化炭素を増やしつつ、酸素を取り込んでいくことが勧められています。

 

過換気症候群における後遺障害のポイント

1)過呼吸は、非器質性精神障害が治癒すれば消失することから、障害の対象ではありません。

2)非器質性精神障害については、精神科、心療内科に通院して治療を続けることになります。
過呼吸を緩和する治療や、薬はありませんが、非器質性精神障害の治療が進むと、
過呼吸は自然消滅しています。
これまでに、症状固定段階で過呼吸発作が問題とされたことは1例もありません。

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