手根骨の有鈎骨骨折
手根骨の有鈎骨骨折
有鉤骨折(ゆうこうこっせつ)は,鉤骨折(こうこっせつ)とも呼ばれます。
右手では、環指(かんし:薬指のこと)と小指の中間の下方にある骨です。
手根骨(しゅこんこつ)の1つです。手のひら側に,突起=鉤(かぎ)が存在する特異な骨です。
手のひら側のCT画像ですが,突起=鉤が骨折しているのが確認できます。
交通事故における有鉤骨骨折
交通事故では,バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で発生します。
アクセルを握っている右手に多く発症しています。
自転車,バイクから転倒する際に,手をつくことで発症する事例もかなりあります。
ズレのない骨折では,6週間前後の前腕部以下のギプス固定が実施され,転位(=ズレ)の大きいときは,骨折している鉤の切除が実施されています。
切除術では,1週間の外固定(いわゆる,「ギプス」)で手指は使用できますが,運動ができるようになるのは4週間以降となります。
なお,交通事故以外ではテニスでラケットを持っているときや,野球でバットを握っているとき,ゴルフのグリップを握っているときに,手のひらに強い衝撃を受けたときに,有鈎骨骨折が発生しています。
有鈎骨骨折における後遺障害
① 想される後遺障害等級
スポーツでの骨折なら一般的には後遺障害を残しません。
スポーツに伴う有鈎骨骨折では後遺障害を残すことなく治癒しています。ギプス固定であっても,切除術であっても同じです。
ところが,交通事故の衝撃は,衝撃力,破壊力がスポーツの衝撃とは比較にならないくらい大きいのです。
骨折部の痛みが長期に続くことが予想されます。
骨折部の変形を3DCTスキャンで立証し,神経症状で,12級13号,14級9号の獲得を目指すことになります。
また,少数ですが手関節の可動域制限で12級6号が獲得できる例もあります。
- 14級9号=局部に神経症状を残すもの
- 12級13号=局部に頑固な神経症状を残すもの
- 12級6号=1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
② 後遺障害申請の際の注意点
専門医の受診が急がれます。
手根骨(手首周辺の骨)の骨折で共通することは,主治医がこれを見逃すことが多いようです。
受傷直後から骨折部に痛みや動作痛が発生するのですが,いわゆる激痛ではありません。
訴えが乏しいことに加えて,XP撮影(いわゆるレントゲン)であっても,手の裏表の2方向からでは確認することができません。
「しばらく様子を見ましょう」と医師から言われ,そのまま何か月か経過したが,痛みが引かないため専門医を受診し,その際骨折が発見されたとしてももはや手遅れとなります。
後になってから発見されても後遺症と認定されない場合が多いようです。
後遺障害の有無を判断する損保料率機構調査事務所が,本件事故との因果関係を疑問視するからです。
「本当に交通事故で怪我をしたのか?」と疑いをもたれてしまいます。
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