距骨(きょこつ)骨折

距骨骨折

 距骨(きょこつ)は踵骨の上方にあり,脛骨,腓骨と連結して足関節を形成しています。
距骨表面の80%は関節軟骨で覆われ,筋肉が付着していないこともあり,血流が乏しい特徴があります。
骨折では,血行障害となり,壊死・偽関節・関節症変化による機能障害を残すことが多いです。

 交通事故では自転車やバイクvs自動車の衝突による転倒時に,背屈を強制され,脛骨や腓骨に挟まって骨折することがほとんどです。
自動車を運転中にセンターラインオーバーの相手車を発見,急ブレーキをするも間に合わず正面衝突を受けた例でも距骨骨折が報告されています。

 上図の①②であれば,壊死も考えにくく底屈位で整復後,10週間のギプス固定で改善に向かいます。
しかし,③④は距骨下関節の脱臼を伴っており,重傷です。
③は壊死の可能性が考えられ,④になると壊死は決定的です。
いずれも整復固定術により強力に内固定を行い,術後,ギプス固定⇒PTB装具となります。

 受傷後6週間を経過すればMRIや骨シンチグラフィー検査で壊死の診断が可能です。
Hawkins兆候=軟骨下骨萎縮が認められれば,血液循環が保たれていると考えられます。
徐々に部分荷重を開始し,骨萎縮像が消失したら全荷重とします。
骨萎縮像を認めないときは,PTB装具で厳重な免荷と自動運動を実施,骨萎縮像の出現を待ちます。

 過去の事例として,全荷重までに2~3年を要した事案もあります。

 平均的には,次の経過をたどります。

  1. 2~3ヶ月でHawkins兆候の陽性=距骨滑車下の骨萎縮
  2. 4~5ヶ月で距骨の硬化像 PWB=部分荷重によるリハビリを開始
  3. 6ヶ月以降,骨梁の修復,様子を見てFWB=全荷重によるリハビリを開始

※NWBは免荷,PWBは部分荷重,FWBは全荷重

 下腿骨の骨折などで使用される装具であるPTB装具により,膝蓋骨で体重を支えるので,足はNWB,宙に浮いている状態です。
両方が同じ高さでないと歩行ができないので,健足にも補高が付けられます。
最近では,人工距骨も臨床で使われ始めているようです。
壊死が多く荷重時期が遅くなるのであれば,人工関節も十分選択の範囲内と思われます。

距骨骨折における後遺障害

症状固定時期の決断

 距骨の骨折では,足関節の可動域制限が後遺障害の対象です。
ところが術後,理想的な経過をたどっても,FWBまでに6ヶ月かかります。
その後のリハビリを含めると症状固定までに,8ヶ月~1年以上が予想されます。

 一般的に保険会社は,4ヶ月を過ぎると,休業損害や治療の打ち切りを打診します。
社会復帰の遅れは,被害者にとっても焦りであり,感情的な対立も珍しくありません。

 受傷後早期に,弁護士事務所へ相談にお越しいただくことをお勧めします。
弁護士が介入すると,弁護士は保険会社に対して,距骨の骨折は治療が長期化することを前もって伝えます。
治療の経過と見通しは,毎月の休業損害の支払確認の際に,ありのままを報告しておきます。
弁護士が介入することで被害者へ電話が入ることはなく,治療に専念することができます。

 例えば被害者が事務職であれば,PWB=部分荷重で就労復帰を指導していますが,現業職で,当面の配置転換が不可能なときは,就労復帰まで休業損害を請求することになります。

 この環境で,FWB=全荷重リハビリまで待ち,この間,足関節の可動域を計測し続けます。
10級11号の認定を目指して,可動域をチェックしながら,症状固定の時期を検討します。

予想される後遺障害等級

 人工距骨に置換したときは10級11号,無腐性壊死となり,足関節固定術が実施されたときは8級7号が認定されます。

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