脛骨顆部骨折
脛骨顆部骨折
診断書には,脛骨顆部骨折,脛骨近位端骨折,脛骨高原骨折,プラトー骨折と記載されています。
年配の医師は,脛骨高原骨折・脛骨近位端骨折,或いはプラトー骨折・脛骨顆部骨折と記載されますが,いずれにしても同一の傷病名です。
脛骨の上端部の外側部を外顆,内側部を内顆と呼んでいます。
脛骨顆部骨折は,外顆に多く,陥没骨折の形態となるのが特徴です。
脛骨顆部骨折は,膝に衝撃が加わった際に多く発症します。
膝に対する衝撃なので,脛骨顆部骨折は単独で起こることは少なく,通常は,膝の靭帯損傷や脱臼,膝蓋骨骨折などを伴います。
イラストでは,骨の上端部がホンの少し骨折したイメージですが,軟骨損傷を伴うため重傷です。
上肢・下肢とも,関節部の骨折は関節の運動制限や骨癒合の不良を伴い,難治性です。
症状は,受傷直後から,激痛,腫脹,膝の変形,痛みによる運動制限などが出現し,ほとんどのケースでは歩くことができません。
診断は,単純XP撮影が中心ですが,軟骨損傷,靱帯損傷,半月板損傷などを想定するのであれば,MRIや関節鏡検査が有用です。
脛骨顆部(けいこつかぶ)は海綿状の骨であるところから,骨欠損部には骨移植を必要とし,強固な内固定が得られにくいのが特徴です。
転位のないものは,保存的にギプス固定となりますが,多くは手術となります。
陥没骨折では,膝部外顆関節面の軟骨損傷を伴うことから,後遺障害を遺残し,5~10年の経過で,深刻は変形性関節症に発展することも予想されます。
①②③は,外顆部の骨折と陥没骨折です。
④⑤⑥では,外顆,内顆,全体の骨折で,陥没変形をきたしています。
②④では腓骨の骨折を伴うこともあります。
②陥没骨折に加えて骨折片転位が認められるときは,関節面を戻すとともに骨折片をスクリューまたはプレートで整復固定がなされています。
このタイプは関節面の壊れ方がひどくなるため,後遺障害を残しやすく,正確な整復が必要です。
③陥没骨折では,陥没部の真下側に穴をあけ,関節面を整復し,できた空洞に自分の腸骨や人工骨を埋め,スクリューで固定します。
④⑤⑥内顆骨折では,僅かな転位でも内反変形=O脚変形となることが予想され,放置すると,将来,変形性関節症になりやすいので,手術により,しっかりと固定しなければなりません。
関節面に段差のあるときは,骨移植,内固定をしっかり行うことは当然なのですが,関節鏡を使用して合併する靭帯損傷を修復し,半月板損傷は可能であれば縫合,不可能であれば切除し,関節面の整復を正確に実施する必要があります。
不完全な治療が行われたときは,被害者は近い将来,外傷性膝関節症に悩まされることになります。
関節面の段差が8~10mmでは,一般に保存的治療が選択されていますが,専門医であれば,5mm前後から関節鏡を使用して,軟骨損傷,靱帯損傷,半月板損傷などを検証,それらを正確に診断し治療を適切に行っています。
この骨折の治療期間は全荷重が許可されるまで8~12週間を要しています。
術後は,膝の可動域制限を防止する観点から,CPM=持続的他動運動器を使用されています。
膝関節内骨折 脛骨顆部骨折における後遺障害
①後遺障害の対象は,膝関節の可動域制限と疼痛です。
脛骨顆部骨折は,機能障害で12級7号が認定されたケースがあります。2002年頃は,多くが10級11号でした。
関節鏡術が進化したこともあり,10級11号は減少傾向となっています。
3DCTで骨癒合状況を,MRIで軟骨損傷のレベルを立証しなければなりません。
②膝関節の疼痛では,患側と健側の膝関節部について,レントゲン正面像の撮影を受けます。
2つの比較で,患側の関節裂隙狭小化を立証します。
さらにMRI,3DCTで軟骨下の骨硬化や関節面の不整などを立証することができれば,局部の頑固な神経症状として12級13号が認定されます。
③骨移植による腸骨の変形は,体幹骨の変形として12級5号ですが,裸体で変形が確認できることが認定の要件です。脛骨顆部の陥没骨折であれば,骨採取も少なく,腸骨後方からの骨採取により変形が目立つこともなく,要件を満たさないことが大半です。
人工骨を用いた骨移植は後遺障害として考慮されません。
④不完全な治療が行われた結果,2分の1以下の可動域制限と膝部の疼痛を残しているときは,治療先に問題があったのですが,それは無視して,症状固定を選択することになります。
治療先でXP,画像診断クリニックで3DCT,MRI撮影を受け,変形性骨癒合,軟骨損傷,関節面の不整,軟骨下の骨硬化を丁寧に立証すれば,10級11号が認定されます。
骨折面の固定はできても,関節面の正確な整復は,専門医でないとなかなか難しい状況です。
手術においても専門医を選択する必要があります。
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