外傷性黄斑円孔(がいしょうせいおうはんえんこう)
IPS細胞による治療で話題となっているものに、加齢黄斑変性があります。
加齢黄斑変性とは、年齢を重ねることで網膜色素上皮下に老廃物が溜まり、
その結果、黄斑部が障害されて、徐々に失明する病気で、現時点では、
有効な治療法が確立されていません。
私たちの眼は、注目したところはよく見えるのですが、それ以外の周りの部分は
ぼんやりとしか見えない構造となっています。
カメラのフィルムに相当する網膜ですが、その中心部分を黄斑と呼び、
視力をつかさどる最も重要な神経細胞が集合しています。
黄斑部では、モノの形、大きさ、色、立体性、距離などの光の情報の大半を識別しています。
さて、外傷性黄斑円孔とは、網膜の中心である黄斑部に穴が開いてしまう外傷です。
交通事故では、自転車、バイクの運転者の眼球打撲で発症しています。
黄斑部に完全な穴が形成されると、視力は矯正しても0.1前後に低下し、
視野の中心が見えにくくなります。
自然に治癒することもありますが、放置しても、加齢黄斑変性のように
失明に至ることはありません。3次元眼底像撮影、OCT検査により、確定診断がなされます。
交通事故では、黄斑円孔が大きいことが多く、ほとんどで硝子体手術が適用されています。
発症から6カ月以内であれば、初回の手術で90%以上の確率で円孔は閉じ、
視力の回復が期待できると報告されています。
初回の手術で円孔が閉鎖できないときは、再手術となり、長期間、
眼内に滞留するガスを入れることになり、予後は不良となります。
外傷性黄斑円孔における後遺障害のポイント
1)外傷の程度、黄斑円孔の大きさ、発症後の経過期間が治療成績に影響を与えます。
黄斑円孔発症後の経過期間が短いほど、また円孔の大きさが小さいほど閉鎖率も高く、
視力の予後も良いとされています。
2)外傷による損傷、黄斑円孔が大きいときは、初回のオペで円孔を閉鎖できないことがあり、
再オペとなりますが、視力低下などの後遺障害を残すことが予想されます。
3)外傷による損傷、黄斑円孔が大きいときは、将来に白内障を発症する可能性を残します。
「将来、白内障を発症したる際は、甲乙間で別途協議を行うものとする。」
示談書には、この文言を挿入しておかなければなりません。
4)視力が低下したときは、
眼の直接の外傷による視力障害は、前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。
スリット検査
直像鏡
前眼部と中間透光体の異常は、スリット検査で調べます。
眼底部の異常は、直像鏡で検査します。
視力検査は先ず、オートレフで裸眼の正確な状態を検査します。
例えば、水晶体に外傷性の異常があれば、エラーで表示されるのです。
その後、万国式試視力検査で裸眼視力と矯正視力を計測します。
オートレフ
前眼部・中間透光体・眼底部に器質的損傷が認められるとき、つまり、
眼の直接の外傷は、先の検査結果を添付すれば後遺障害診断は完了します。
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