脊髄の前角障害、前根障害

先に、脊髄の中心部が損傷する中心性頚髄損傷を説明していますが、
本症例は、脊髄の前角部あるいは前根部が損傷したものです。

いずれにしても、脊髄損傷のカテゴリーであり、ムチウチではありません。

 

脊髄の中心部には、蝶のような形をした灰白質があります。
1つの脊髄末梢神経では、第1脊髄神経を除き、2つの神経根が存在しています。

①前根=運動神経根
脳や脊髄からの信号を、運動神経根を経由して筋肉に伝達しています。

②後根=感覚神経根
灰白質の後方にあって、触覚、姿勢、痛み、温度などの
感覚情報の信号を体から脊髄に伝えます。

 

※信号の経路
信号は、脳に行くものと、脳から来るものがあり、それぞれ別の経路を通ります。

①外側脊髄視床路 感覚神経根で受けた痛みや温度の信号が、この経路を通って脳に伝わります。
②脊髄後索 感覚神経根で受けた腕や脚の位置信号が、この経路を通って脳に伝わります。
③皮質脊髄路 筋肉を動かす信号が、この経路を通って脳から運動神経根に伝わり、
運動神経根を通じて筋肉に伝わります。

交通事故では、正面衝突など、前方向からの大きな衝撃により発症するもので、少数例の経験です。

症状は、頚椎症性脊髄症と同じで、圧迫部位より下の手・足の症状、箸が持ちにくい、
字が書きにくい、ボタンがはめにくいなど、手指の巧緻運動が困難で、
著明な筋萎縮と筋力低下、弛緩性運動麻痺が認められ、片側性が多いのですが、
両側性も報告されています。

頚椎症性脊髄症では、下肢が突っ張って歩きにくい、階段を降りるとき足がガクガクする、
上肢の筋萎縮、脱力、上下肢および体幹の痺れ、症状がさらに進行すると
膀胱直腸障害も出現しますが、前角障害、前根障害では、下肢に症状が認められることと、
知覚障害は、ほとんどありません。

C5/6では、三角筋、上腕二頭筋、棘上筋、棘下筋、腕撓骨筋に筋萎縮が認められます。
回外筋の筋力低下は認められますが、回内筋の筋力は保たれていることが多いのです。

C7では、上腕三頭筋の筋萎縮を認める。
翼状肩甲を合併することが多いと報告されています。
回内筋の筋力低下を合併することが多いとも報告されています。

※翼状肩甲とは?

上腕を挙上する際に、肩甲骨の内側縁が浮き上がります。
これが、天使の羽根のように見えるので、翼状肩甲骨と呼ばれています。

正常肩関節では、上腕を90°以上挙上するときには、肩関節だけでなく、
肩甲骨の内側で前鋸筋や僧帽筋の働きで、肩甲骨が胸郭の外側を滑るように前方に移動し、
下端が上方に回転しています。

前鋸筋の麻痺では、肩甲骨の内側縁が浮上し、翼状肩甲骨となり、上腕の屈曲ができなくなります。

C8では、小手筋、第1背側骨間筋の筋萎縮が見られ、総指伸筋の筋力低下で垂れ指となります。

手指背屈位でMP関節の背屈ができず、小指外転筋の筋萎縮、尺側手根伸筋の筋力低下が
認められます。

立証は、病変の広がりについては、針筋電図による脱神経所見の検索が有用です。
頚椎MRI、ミエログラフィー、NCV、MEPなど電気生理学検査も実施されています。

前角障害と前根障害の2つがありますが、前角障害では、神経の回復が不可逆性になる
可能性が高く、早期オペの適応となります。

前角障害、前根障害は、頚椎症性筋萎縮症と診断されることもあります。

 

前角障害、前根障害における後遺障害のポイント

1)事例
傷病名は、右肩腱板損傷ですが、持参されたMRIでは、腱板損傷を確認することができません。
このままでは、後遺障害は非該当が予想されるところから、精査受診対応で専門医を受診しました。
結果、頚椎前角障害が診断され、腱板損傷は否定されました。

前医は、C5/6前角障害により、三角筋、上腕二頭筋、棘上筋、棘下筋、腕撓骨筋に
著明な筋萎縮が認められたのですが、この筋萎縮を、右肩腱板損傷と診断したものと思われます。

その後、被害者は入院となり、頚椎前方固定術が実施されました。
脊柱の変形で11級7号、三角筋、上腕二頭筋、棘上筋の筋萎縮による右肩関節の
機能障害で12級6号、併合10級が認定されました。

2)頚椎の固定術
痛みや不快感を訴える症例では、まず、保存的治療が選択されます。
それでも改善が得られないときは、手術の適応となりますが、頻度は少ないものです。
先の痛みに加え、筋力低下や筋萎縮の神経脱落症状を示している症例では、
躊躇なく手術が選択されています。

頚椎前角障害の手術は、前方固定術、後方椎間孔拡大術、椎弓形成術が行われています。
予後については、痛みに比べて痺れが消退しにくく、C5/6、近位型に比べてC7/8遠位型の
麻痺がなかなか改善しにくいと報告されています。

3)頚椎前角障害と診断されたときは、手術が優先されます。
症状固定は、手術後4カ月を経過した段階で決断することになります。
針筋電図で、棘上筋から小指外転筋に至るまでの脱神経所見を検証します。
日常生活の支障は、脊髄症状判定用の用紙に、主治医の記載をお願いしなければなりません。

その後、被害者は入院となり、頚椎前方固定術が実施されました。
脊柱の変形で11級7号、三角筋、上腕二頭筋、棘上筋の筋萎縮による
右肩関節の機能障害で12級6号、併合10級が認定されました。

4)頚椎の固定術について
痛みや不快感を訴える症例では、まず、保存的治療が選択されます。
それでも改善が得られないときは、手術の適応となりますが、頻度は少ないものです。
先の痛みに加え、筋力低下や筋萎縮の神経脱落症状を示している症例では、
躊躇なく手術が選択されています。

頚椎前角障害の手術は、前方固定術、後方椎間孔拡大術、椎弓形成術が行われています。
予後については、痛みに比べて痺れが消退しにくく、C5/6、近位型に比べて
C7/8遠位型の麻痺がなかなか改善しにくいと報告されています。

5)頚椎前角障害と診断されたときは、手術が優先されます。
症状固定は、手術後4カ月を経過した段階で決断することになります。
針筋電図で、棘上筋から小指外転筋に至るまでの脱神経所見を検証します。
日常生活の支障は、脊髄症状判定用の用紙に、
主治医の記載をお願いしなければなりません。

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