ギヨン菅症候群
尺骨神経が、ギヨン管というトンネルの中で絞扼・圧迫されているものです。
尺骨神経は、頚椎から上腕の内側を走行し、肘の内側を下降し、手首周辺で、有鈎骨の鈎と豆状骨で構成されるギオン管の中を通過します。
有鈎骨骨折は、先に、「手根骨の骨折 有鈎骨骨折」で解説していますが、右手では、環指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。
交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。
自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。
手のひら側のCT画像ですが、突起=鉤が骨折しているのが確認できます。
有鈎骨の骨折により、ギオン管症候群を発症します。
神経伝達速度検査によって病変部位の特定が可能です。
治療は保存的に低周波電気刺激療法やマッサージ、
レーザー光線の照射が行われますが、効果が得られないものは神経剥離術、
神経移行術がおこなわれます。
これらが不可能なものは腱移植術をおこない、装具の装用で機能を補完することになります。
専門医の執刀でなければなりません。
尺骨神経麻痺における後遺障害のポイント
①肘部管症候群、ギヨン管症候群の傷病名であれば、尺骨神経が肘部管、
ギヨン管のトンネルの中で絞扼・圧迫を受けて神経麻痺を発症しているのであり、
この要因を排除すれば、改善が得られます。
切断や挫滅による神経麻痺であれば、マイクロサージャリーで尺骨神経をつなぐ手術となります。
大多数は、切断・挫滅ではなく、肘部管やギヨン管の中での絞扼・圧迫による神経麻痺となります。
したがって、処置が早ければ、手術で回復が得られ、神経麻痺の後遺障害を残しません。
②受傷から6カ月近くを経過しており、切断・挫滅や神経絞扼・圧迫であっても、
骨間筋萎縮が認められ鷲手変形をきたしているときは、陳旧性=古傷となっていますから、
この段階から専門医の手術を選択しても、元通りは期待できないのです。
手術を強行しても、本来なら、手関節の屈曲制限で10級10号、
親指以外の2の手指の用廃で10級7号、併合9級が認定されるのですが、
12級もしくは併合11級レベルに薄められ、損害賠償額は大幅に減額されるだけの結果となります。
したがって、症状固定を選択、損害賠償を解決してから、手術に着手することになります。
つまり、最初の処置が全てを決定づけるのです。
③最近、外傷性頚部症候群で、肘部管症候群の傷病名が目立つように思います。
肘関節部の切創、上腕顆上骨折、上腕骨内上顆骨折、事故による変形性肘関節症、
外反肘、手関節切創などの傷病名がなく、外傷性頚部症候群のみでは、
事故との因果関係は否定されます。
傷病名が肘部管症候群であっても、神経伝達速度検査や針筋電図検査で
立証されていないものがほとんどで、これらは、上肢の痺れの訴えが強いところから、
間違った診断をしたものが大多数です。
④本来の尺骨神経麻痺であっても、専門医を紹介して対応を委ねる医師は例外的です。
さらに、切断や挫滅した尺骨神経をつなぎ合わせる手術となると、日本でも、
専門医が10名いるかいないかの現実です。
そんなこんなで、後遺障害を確定させることにより、解決を迎えているのですが、
見逃されるケースもかなりの数、発生しています。
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