副腎の損傷

副腎は、両方の腎臓の上に帽子のように乗っている左右1対の臓器で、大きさは4~5cmです。

副腎は、皮質と髄質に分かれていて、非常に大切な50種類のステロイドホルモンを
産生しています。

ヒトが生きていくために重要なホルモンは、コルチゾール、アルドステロン、DHFA、
アンドロステンジオンで、副腎で産生されるホルモンは、体内で濃度が一定に保たれ、
分泌量が調節されています。

両方の副腎の機能が低下すると、内服によるステロイド・ホルモンの補充が必要となります。

 

1)ステロイド・ホルモンの機能、欠乏したときの症状

①コルチゾール

糖代謝、蛋白代謝、脂質代謝や電解質作用を有しており、このホルモンが不足すると、
色素沈着、食欲不振、体重減少、易疲労、悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出現します。

②アルドステロン

副腎皮質から分泌されるステロイド・ホルモンで、腎臓からのナトリウム排泄を抑制し、
血液中のナトリウムとカリウムのバランスを制御しており、このホルモンが不足すると、
低血圧、低ナトリウム血、高カリウム血、脱水、代謝性アシドーシスを呈し、
ショック状態に陥ります。

③DHFA

性ステロイドで、女性にとっては貴重な男性ホルモンです。
このホルモンが不足すると、腋毛・恥毛の脱落、性欲減退、勃起障害、無月経となります。

④アンドロステンジオン

性ステロイドで、やがて男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンであるエストロンになります。
このホルモンが不足すると、DHFAと同じで、腋毛・恥毛の脱落、性欲減退、男では、
勃起障害、女性では、無月経となります。

2)問題点

上記の通り、副腎は、ヒトが生きていくための重要なステロイド・ホルモンを産生しており、
外傷による2つの副腎の摘出では、生涯、コルチゾールを主体とした補充療法が生命維持のため
必要となります。

もちろん、副腎皮質の機能の低下でも、補充療法が必要となります。

補充療法中に、副腎皮質ホルモンが不足すると、急性副腎皮質不全を招くことも予想されます。

しかし、厚生労働省は、この状況で治癒とすることは適切でないとして、労災保険における
後遺障害等級認定を否定していますが、交通事故となれば、症状固定を否定することはできません。

3)交通事故による副腎の摘出

自転車やバイクと自動車の衝突では、腹部に対する強い打撃で、腎臓や副腎の破裂が起きています。

これまでにも複数例を経験していますが、交通事故で1側の腎臓や副腎を摘出することはあっても、
両側の摘出は経験していません。

正常な副腎が1つ残れば、機能が半減することはほとんどなく、むしろ、1つの副腎が2つ分の
働きをすると報告されており、これらを信用して、後遺障害を無視してきました。

しかし、残った副腎に、相当なストレスがかかることは予想されるのです。

将来には、加齢の要素もあり、副腎の機能が徐々に低下していく可能性は十分に考えられるのです。

腎臓では、糸球体濾過値=GFRの値により、後遺障害等級の認定をしていますが、副腎では、
そのような設定はなされていません。

4)副腎皮質の機能低下による後遺障害のポイント

①副腎の機能検査で、フォローすることを怠らないこと、
副腎の機能検査は、血液検査が主体です。

※ACTH検査

ACTH=副腎皮質刺激ホルモンの測定は、早朝空腹時に安静にした状態で採決をします。
起床直後から午前中にかけて分泌量が増加し、午後になると減少するに血内変動が見られます。
また、ストレスを受けると数値は上昇します。
ACTHの測定は通常、コルチゾールの測定と併せて行われます。

ACTH=副腎皮質刺激ホルモンの基準値は、早朝安静時で7.4~55.7pg/ml

※コルチゾール検査
コルチゾールの測定は、午前8~10時に採血を行なって調べます。

分泌量は、朝、起床したときが最も多く、午後から夜にかけては徐々に減っていきます。

尿中の遊離コルチゾールの測定を行なうこともあります。
24時間の蓄尿を行うことにより、コルチゾールの1日の分泌量を評価できます。

血中コルチゾールの基準値は、4.0~23.3ug/ml
尿中コルチゾールの基準値は、26.0~187.0μg/日

これら以外では、空腹時血糖値検査、血清中のカリウム、ナトリウムの濃度を調べる
血液検査が行われています。

②副腎機能検査で異常が認められるとき、検査値に異常はないとしても、吐き気や腹痛、
嘔吐、発熱、関節痛、食欲不振、急激な血圧の変化、衰弱、悪寒、発疹、心拍数が高く
不安定などの症状が出現したときには、主治医とも相談の上、日常生活、仕事上の具体的な
支障を明らかにして後遺障害診断を受け、申請することになります。

等級は、9級11号、11級10号のいずれかが想定されます。

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