特殊例 気管カニューレ抜去困難症
一般的には気道確保の目的で気管切開を行い、気管カニューレ、
通称Tチューブを挿管するのですが、稀に、肉芽の増殖、気管切開の位置や管理上の問題で
抜去ができなくなることがあります。
気管や咽頭を受傷しても、同様のことが考えられます。
傷病名は、気管カニューレ抜去困難症と診断されます。
極めて稀な傷病名です。
気管カニューレ抜去困難症と診断されたときは、10級3号が認定されます。
半永久的に抜去が困難であると診断されているときは、6級2号が認定されます。
気管カニューレ抜去困難症における後遺障害のポイント
1)医学の進歩は目覚ましく、気管カニューレ抜去困難症であっても、
手術で除去することができるようになっています。
ただし、予後は、術後に誤嚥をきたすか、肉芽が再増殖してくるかの2つのリスクがあり、
いつでも、この手術で成功するのではありません。
手術では、気管内の肉芽を切除し、内腔にプラスチックのチューブを数カ月間、留置します。
チューブは、気管切開孔から挿入、切開孔の上下3~5cmの拡がりで、気管の内腔を覆い、
新たな肉芽の増殖を抑える処置が実施されます。
術後しばらくして、飲み物の経口摂取の訓練が開始され、誤嚥なく摂取することができれば、
最初のリスクはクリアーしたことになり、一旦は退院となります。
退院後も、先に気管の内腔に挿入したチューブが抜けるまでは、気管切開孔から呼吸を続けます。
第2のリスクである、肉芽の増殖が発生していないことが確認できれば、チューブを抜去し、
その後、肉芽が再発しなければ、気管の切開孔を閉鎖します。
声を残し、
口から食べられて、
誤嚥による肺炎を発症しない、これらの条件を満たすには、長い入院で、
肉芽再発のリスクを乗り越える必要があるのです。
※肉芽(にくが)
外傷や炎症により欠損を生じた部分に増殖する赤く柔らかい粒状の結合組織のこと、
2)気管カニューレ抜去困難症と診断されたときは、症状固定として後遺障害の申請を先行します。
気管カニューレを挿管するほどの重症例ですから、長い入院が続きます。
ここに至って、抜去術が提案されても、リスクがあり、保険会社としては、
さらなる手術を認めることはなく、症状固定は問題なく受け入れられます。
等級認定、損害賠償交渉を終えた時点で、医師とも相談の上、抜去術を検討することになります。
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