外傷性腰部症候群の神経症状について
外傷性腰部症候群の神経症状について
脊椎は,25の椎骨が椎間板というクッションをはさんで,頚部~尾底骨まで連なったものです。
頚椎はC,胸椎はTh,腰椎はL,その下の仙椎はSと表示します。
腰椎は5つの椎骨が椎間板を挟んで連なっており,椎骨の空洞部分は脊髄が走行しています。
脊髄はL1で終わり,それ以下は馬尾神経(ばびしんけい)が走行しています。
椎間板,脊椎を縦に貫く前縦靭帯と後縦靭帯,椎間関節,筋肉などで椎骨はつながれています。
椎骨の馬尾が走行する部分を椎孔(ついこう)といい,椎孔がトンネル状に並んでいるのを脊柱管と呼びます。
馬尾神経から枝分かれした神経根は,それぞれの椎骨の間の椎間孔と呼ばれる部分を走行,身体各部を支配しています。
外傷性腰部症候群で注目すべきは,L3/4/4/S1の神経根に限られています。
素因は多数で椎間板ヘルニアであり,腰部捻挫ではそれ以外の部位は無視することになります。
脊髄から枝分かれのl3/4/5/S1の左右6本の神経根は,それぞれの下肢を支配しているからです。
L3/4のヘルニアでは,L4神経根が障害され大腿前面,下腿内側面に知覚障害が出現,膝蓋腱反射は減弱,つまり大腿四頭筋・前脛骨筋が萎縮し,大腿神経伸展テスト=FNSが陽性となります。
L4/5のヘルニアではL5神経根が障害され,下腿前外側,足背に知覚障害が出現,長母趾伸展筋の筋力低下,大臀筋の萎縮が見られ,ラセーグテストは陽性となります。
L5/S1のヘルニアでは,下腿外側,足背,足底外縁に知覚障害が出現,アキレス腱反射は低下・消失し,腓腹筋および腓骨筋力が低下して,つま先立ちが不可能となります。
ラセーグテストでは陽性所見を示します。
外傷性腰部症候群における後遺障害のポイント
1 事故との因果関係について
主治医はMRI画像でヘルニアが認められても事故との因果関係は明言しません。なぜなら,脊椎の変性は18歳ころから始まると言われているからです。
したがって,30歳を超えれば,ほぼ全員の被害者に,大なり小なりの年齢変性が認められます。
年齢変性の代表は,腰椎椎間板ヘルニアで,多くは末梢神経である神経根を圧迫しています。
末梢神経である神経根は,膜で覆われた状態で存在しています。
事故前にヘルニアが存在していても多くは無症状ですが,交通事故の衝撃で,この膜に傷がつくと支配神経の領域に,痛み,痺れなどの神経根症状が出現し苦しむことになります。
そして,この症状こそが,後遺障害の対象となるのです。
14級9号レベルであれば,傷ついた膜の修復がなされると無症状に戻ります。
時間はかかりますが,生涯,痛みや痺れが継続することはありません。
2 早期のMRI撮影について
早期のMRI撮影で神経根に浮腫が確認できることがあります。
これが確認できれば,腰部椎間板ヘルニアは外傷性であることを立証したことになります。
XPやCTは骨を見るためのもので,神経根が確認できるのはMRIだけです。
受傷二ヶ月以内に,MRIの撮影を受けなければなりません。
受傷後に撮影したMRIで,L4/5/S1の神経根の通り道が狭まり,明確に圧迫を受けていることがわかれば,自覚症状に一致した画像所見が得られたことになり,後遺障害の獲得に相当近づいたことになるのです。
3 6ヶ月間で4つの要件を揃える
- 30万円以上の物損
- 事故直後からの症状の出現,早期のMRI撮影
- 6ヶ月間の真面目な整形外科通院
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不明点等ありましたら,いつでもご相談に来てください。
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