環軸椎脱臼・亜脱臼について
環軸椎脱臼・亜脱臼について
頚椎は正面から見ると7つの椎体の連なりであり,C1(環椎)とC2(軸椎)は独特な形状をしています。
軸椎には歯突起があり,軸を中心に環軸が回転することで,頚部を左右に回転させることができます。
軸椎以下の頚椎は,椎間板という軟骨の座布団で椎体間が連結されており,これにより頚椎がしなるように動くことができるのです。
環軸関節の位置は,正面では口のあたりに位置しています。
環椎の上部に頭蓋骨が乗っており,この関節の支えで頚部は左右に動くのです。
左のXP側面像では環椎が前方向に脱臼しているのが確認できます。
右は整復後,スクリューで固定されたものです。
環椎と軸椎とは,7つある頚椎の,最上部と2番目の椎体骨で,頭蓋骨と接しています。
交通事故では,後頭部方向から大きな外力が加わり,過屈曲が強制されることで軸椎の歯突起が骨折し,環軸椎亜脱臼・脱臼が発症しています。
転位が高度で環椎と軸椎を結合する関節が完全に外れてしまったものを環軸椎脱臼、外れかかった状態で4mm以上の転位があるものを環軸椎亜脱臼と呼んでいます。
転位のレベルによっては,脊柱管の中を走行する脊髄が圧迫・損傷することがあります。
脊髄の圧迫症状として手足の運動麻痺,感覚麻痺,呼吸障害,膀胱・直腸障害があります。
後頭神経の圧迫症状としては,後頚部痛,椎骨動脈の圧迫に伴う強い眩暈(めまい)を発症し坐位ができなくなります。
環軸椎亜脱臼に対しては,保存療法としてソフトカラー,フィラデルフィアカラーによる固定がなされています。
脊髄症状を示す重症例では,オペは必至で,現在ではスクリュー固定が行われています。
環軸椎脱臼・亜脱臼における後遺障害について
後遺障害は,脊柱の変形障害,脊柱の運動障害,神経系統の機能障害の3方向から検証していくことになり,立証作業としては非常に高度です。
① 脊柱の変形障害
環椎または軸椎の変形・固定により,次のいずれかに該当するものは8級2号となります(8級2号=脊柱に運動障害を残すもの)。
- 60°以上の回旋位となっているもの
- 50°以上の屈曲位または60°以上の伸展位となっているもの
- 側屈位となっており、XP等により、矯正位の頭蓋底部両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30°以上の斜位となっていることが確認できるもの
この内,1および2については,軸椎以下の脊柱を可動させず,当該被害者にとっての自然な肢位で、回旋位または屈曲・伸展位の角度を測定します。
② 脊柱の運動障害
頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたものは8級2号となります。
③ 神経系統の機能障害
環軸椎の脱臼骨折で固定術が実施された背景には,脊髄損傷を最小限にする目的があります。
術後の被害者に,上・下肢の麻痺、強烈な痺れ,上・下肢の疼痛,排尿障害など重篤な脊髄症状が残存していれば,神経系統の機能障害で等級の獲得を目指す必要があります。
障害の程度により,9級10号,7級4号,5級2号が選択されています。
- 9級10号=神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 7級4号=神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 5級2号=神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
膀胱機能障害は,併合の対象となります。
後遺障害の立証では,後遺障害診断書以外に「脊髄症状判定用」 の用紙を提出し,肩・肘機能,手指機能,下肢機能,上肢・下肢・体幹の知覚機能,膀胱機能,日常生活状況について検査と結果の記載をお願いしなければなりません。
排尿障害は,ウロダイナミクス検査で立証することになります。
立証は,脊椎・脊髄の専門医にお願いするべきです。
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