股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)
関節唇は、肩と股関節にだけに存在するもので、環状の線維軟骨組織で形成されており、
関節の安定性を高める、滑り止めの役割を果たしています。
股関節唇は、股関節内の大腿骨頭が、外に外れるのを防ぐ土手のような役割をしているのです。
交通事故では、歩行者、自転車、バイクなど、転倒時に、股関節が大きく広げられることにより、
関節唇に亀裂が発生しています。
股関節唇損傷が、そのまま放置されると、亀裂が大きくなるばかりでなく、裂けた軟骨が関節の中に
入り込んでスムーズな動きを妨げるようになり、さらには、入り込んだ軟骨が股関節表面を傷つけ、
症状は深刻化していき、やがては、手術が必要となります。
聞き慣れない傷病名ですが、ダウンタウンの松本人志さん、元巨人の杉内俊哉投手、
俳優の坂口憲二さん、アメリカではレディーガガさんが、この傷病名で悩みました。
股関節唇損傷では、脚を動かす動作で疼痛が走り、引っかかるような症状を訴えます。
あぐらをかく、股関節を外側に開く運動=外旋、内側へ倒すような運動=内旋するときに疼痛が生じ、
日常的には、靴下を履く、爪を切るなどの股関節を深く曲げるような動作で疼痛が発生します。
症状が軽いときは、関節を深く曲げるような無理な動作を避け、鎮痛消炎剤の内服で炎症を抑え、
症状が和らぐのを待ちます。
重症では、関節鏡手術などの対象となります。
股関節の外側に小さい穴を、数カ所開け、内視鏡によって、損傷部を切除、あるいは縫合する
股関節鏡による手術です。
股関節唇損傷における後遺障害のポイント
1)軽度な股関節唇損傷では、保存的な治療が選択されますが、股関節の運動制限や
鎮痛消炎剤が処方され、丁寧なリハビリが行われます。
「その内に、治る」と放置されることは、保存療法とはいいません。
受傷から1カ月を経過するも、股関節部に運動痛があるときは、専門医を受診する必要があります。
2)選択すべき治療先は、内視鏡術を得意としているところで、人工関節の施術数を自慢としている
ところではありません。
人工関節は、最終的な選択であり、関節鏡術は、それに至るまでの積極的な手術となります。
当然、高度で熟練した技術が必要であり、どこでも良いのではなく、医大系の総合病院で、
股関節部の関節鏡術の症例数の多いところを選んでください。
3)「その内に、治る」と放置され続けた結果、歩行に杖や片松葉が必要で、座っているだけでも、
股関節部に痛みが生じるレベルとなると、関節鏡術を受けたとしても、スッキリと改善はしません。
そんなときは、症状固定として、後遺障害の申請を優先させることになります。
股関節唇損傷は、MRIで立証します。
平均的には、股関節の可動域で12級7号が認定されています。
4)股関節の可動域が4分の3以上で、機能障害に該当しないときでも、疼痛の神経症状で12級13号が
認定されています。
保険屋さんは、100万円の後遺障害慰謝料に、5年程度の逸失利益を提案しますが、それでは、
頸椎捻挫の12級と同じ扱いです。
MRIで他覚的所見が認められていることを強調して、290万円の後遺障害慰謝料と、
15年以上の逸失利益を請求、獲得しなければなりません。
いずれも、示談締結後に、健康保険適用で関節鏡術を受け、さらなる改善を目指します。
5)放置された結果、股関節唇の裂けた軟骨が関節の中に入り込み、軟骨が股関節表面を
傷つけているとき、変形性股関節症と診断されたときは、関節鏡術ではなく、人工関節置換術の
対象となります。
このときは、手術を先行し、その後に症状固定とします。
人工関節の置換により、10級11号が認定されます。
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