ACL前十字靱帯損傷
ACL前十字靱帯損傷
膝は太ももとすねの骨をつなぐ関節で,膝には内側側副靭帯,外側側副靭帯,前十字靭帯,後十字靭帯の4つの靭帯が存在します。
内・外側側副靭帯は上下の骨が,横方向,左右にずれてしまうことを,前・後十字靭帯は前後へのずれを防止しています。
前十字靭帯は,大腿骨の外側と脛骨の内側を結び,脛骨が前にずれてしまうことを防いでいます。
その目的から前十字靭帯は,膝関節の安定性を保つ上で1番重要な靭帯です。
膝を伸ばしているとき,この靭帯は張っている状態です。
交通事故では膝を伸ばして踏ん張っているときに,膝を捻ると前十字靭帯損傷が起きています。
交通事故ではバイクを運転中の事故に多く発生します。ほとんどは断裂で,なにかがブチッと切れたような音を感じたと,多くの被害者から聞いています。
関節内は大量に出血し大きく腫れ上がります。
前十字靭帯損傷は,lachmanテストで診断を行います。
靭帯が断裂しているなら膝はぐらつきます。そのぐらつきの有無や特性を,このテストで確認します。
膝を15~20°屈曲させ,前方に引き出します。
前十字靭帯断裂のときは,脛骨が異常に前方に引き出されます。
lachmanテストで大まかな診断がつきますが,損傷の程度を知るためにレントゲン撮影,CTスキャン,関節造影,MRI等が実施されます。MRIがとても有効です。
ストレスXP撮影
脛骨を前方に引き出し,ストレスをかけてレントゲン撮影を行います。
断裂があるときは,脛骨が前方に引き出されて写ります。
後遺障害診断書には,○○mmの前方引き出しを認めると記載をお願いしなければなりません。
関節鏡
関節鏡で直接,前十字靱帯や半月板損傷を確認することが可能です。
受傷直後は,膝を固定し患部を氷水でアイシングします。アイシングは膝全体に3~4日間続けます。
一度断裂した前十字靭帯は自然につながることはありません。
軽症例に対しては,大腿四頭筋やハムストリング筋などを強化する,保存的治療をおこないます。
前方引き出しテストで,すねが太腿より前に異常に引き出される状態では,膝崩れを頻発し,半月板損傷を引き起こします。したがって,手術により靭帯の再建をおこないます。
靭帯の再腱術は受傷後1か月程度の安静と可動域訓練の後に半腱様筋腱,薄筋腱,膝蓋腱の中央3分の1を採取して前十字靭帯を繋ぎ再建します。
再腱後は8~12か月のリハビリが必要となります。
その他,痛みや腫れがひいた受傷4~6週間後に,関節鏡下において自家靭帯で靭帯再建術を行ないます。
ストレスXP撮影で10mm以上の動揺性が認められる場合は,手術の対象となりますが,極めて高度な技術を必要とします。
ACL前十字靱帯損傷における後遺障害
この症状は,保存療法に終始した被害者の例が大半です。
つまり膝関節に動揺性が認められ,日常や仕事上に大きな支障が認められる状況です。
通常歩行に,常時,装具の必要性のある場合は,1関節の用廃で8級7号が認定されます。
受傷から時間が経過し陳旧性損傷となっているときは,手術で改善できる保証がありません。
半腱様筋腱,薄筋腱,膝蓋腱の中央3分の1を採取して編み込んで移植する再建術では,さらに8か月以上の休業が必要となり,現実的には選択肢となりません。
もちろん,保険会社が再建術の治療費を負担することも考えられません。
本件では,症状固定として後遺障害の申請を行います。
手術は仕事の都合と勤務先の了解を得て,示談解決後に選択することになります。
先に後遺障害を確定させるというイレギュラーな方法ですが,これしか選択肢がないのです。
常時,固定装具を装着する必要性のないものは10級11号が,重激な労働に限って,固定装具の必要性のあるものは12級7号が認定されます。
後遺障害の立証には必ず,ストレスXP撮影が必要となります。
ストレス撮影で,5~8mmの動揺性が認められれば,12級7号,8~10mmで10級11号,12mm以上で8級7号,経験則による目安です。
ストレスXP撮影で動揺が立証されないと,12級以上の後遺障害の認定の可能性はかなり低くなります。
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