半月板損傷
半月板損傷
膝関節には関節を支え,左右前後のズレを防止している靭帯の他に,関節の動きを滑らかにし,クッションの役目を担当する半月板という組織があります。
大腿骨と脛骨の間に存在し,紋甲イカの刺身をイメージさせる色と硬さの軟骨のクッションで,上下の圧力を分散し関節軟骨を保護しているのです。
医学的には細胞外線維性基質と呼ばれる軟骨の一種です。
ひとたびこれが割れる,或いは切れるとなると,捲れて関節軟骨を削ることもあれば,骨と骨の間に引きずり込まれることがあります。
交通事故では横方向からの衝撃で膝をひねったときに,半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まれて,損傷・断裂します。
はね飛ばされ着地する際に,膝関節が屈曲しつつひねりが加わると,水平方向のストレスが加わることにより,半月板を部分的,あるいは全体的に断裂しています。
受傷直後は疼痛が主症状であり,膝を伸ばすと,引っかかるような違和感が常にあります。
大きな断裂で関節内に半月板の一部がはまり込んだときは,関節がある角度から伸展できない状態=ロッキング症状となり,激痛と可動域制限で歩行ができなくなります。
半月板の辺縁部には血管があり,損傷が血管の辺縁部まで達したときは,関節内に出血します。
半月板の損傷部位に一致して膝関節部に圧痛や運動時痛が認められます。
内側半月板損傷のほうが,外側半月板損傷より5倍も多く発生すると報告されています。
①マクマレー・テスト
仰向けで膝を最大屈曲させ,ゆっくり足を動かすと膝に激痛やグキグキという異常音が聞こえます。
②グリンディング・テスト
うつ伏せで膝を90度屈曲し,踵を下に押しつけながらまわすと痛みを発します。
上記のテスト以外に,単純レントゲン撮影・CTスキャン・関節造影・MRI・エコーなどにより診断をしていますが,MRIがとても有効です。
関節鏡検査であれば直接,半月板の損傷を確認することができます。
半月板の大部分は血液を送り込んでいる血管がありません。
そのため半月板損傷に対する治療法は,温熱療法や,関節内に直接ステロイドを注入する薬物療法,ヒアルロン酸の注入,痛み止めや消炎鎮痛剤等の内服,リハビリテーションなどの保存的治療が中心となります。
しかし,放置すると変形性膝関節症に発展するところから,手術が選択されています。
手術は断裂部位の縫合か,切除の2者択一です。
手術は関節鏡という小さなカメラを関節に入れて,モニターテレビで関節の中を見ながら行います。
術後は膝をギプス固定し安静を保ちます。
縫合の場合は術後約6週間,切除の場合は,約2週間で社会復帰が可能です。
半月板の単独損傷は少なく,交通事故では,60%の確率で,前十字靱帯や内側側副靱帯の損傷を合併しており,関節軟骨の損傷を伴うこともあって注意を要します。
逆に前十字靱帯の単独損傷で膝部動揺関節が生じ,それが誘因となって半月板を損傷することもあります。
半月板損傷における後遺障害のポイント
以前は膝の可動域制限で12級6号の獲得もありましたが,関節鏡術が進化し,機能障害で後遺障害が認定されることは少なくなっています。
問題となるのは,膝の打撲と捻挫と診断され,半月板損傷が見落とされたときです。
陳旧性となった半月板損傷は,関節鏡術でもスッキリと治りません。
多くは痛みを残し,通常歩行に悪影響を与えています。
MRIで半月板の修復状況を明らかにすることで,12級13号,14級9号が認定されています。
また,半月板損傷に対して,ヒアルロン酸ナトリウムを関節内に注入する保存療法が行われております。
膝関節軟骨の成分でもあるヒアルロン酸は,水分の保有率が高く,関節軟骨や半月板が傷ついたとき,関節の潤滑油やクッションの代わりになり,動きをよくしてくれるからです。
しかし,ヒアルロン酸を注射しても軟骨が再生されることはありません。
1回の注入で得られる効果は数日間,時間の経過によりヒアルロン酸は吸収され,消失してしまいます。
ひとたび欠損した半月板の組織,軟骨が再生することはないので,半月板を完全に元通りに戻すことは大変難しい現状があります。
ただ,自分の膝の滑膜組織からとった幹細胞を使用して,半月板を再生させる治療法が日本で開発され,現在臨床研究が進められています。
近い将来,半月板の再生治療が実現する可能性はあります。
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