主婦の休業損害について

休業損害とは

休業損害とは、傷害の治癒あるいは後遺障害の症状固定までに発生する就労不能ないし通常の就労ができないことにより生ずる収入減少額をいいます。主婦は、家族のために家事労働に従事しているのであって、家事労働の対価として収入を得ているわけではありませんから、収入減少額という損害は生じないとも思えます。
そこで、まず、そもそも、主婦に休業損害が認められるかが問題となります。
結論から言うと、受傷のため家事に従事することができなかった期間につき、休業損害を請求することができます(最判昭和50.7.8 交民8巻4号905頁)。
主婦が行う家事労働も、家族外の者に頼めば一定の報酬が発生するものですので、主婦は、家族に対し、この報酬を請求することができるはずですが、家族関係の情誼が存在するがゆえに、これを請求しないに過ぎません。そのため、主婦は、家事労働による収入を得ているのと同視できるからです。

主婦の収入額をどのように解するか

もっとも,観念的には、家事労働による収入を得ているといえても、現実には、家事労働の対価としての収入を得ているわけではありません。そこで、次に、算定の基礎となる収入額をどのように解するかが問題となります。
これについては、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額が算定の基礎とされます。
賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施している賃金構造基本統計調査の結果をまとめたものであり、この調査は、統計法に基づく「賃金構造基本統計」の作成を目的とする統計調査であり、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにするものです(厚生労働省ホームページより)。
主婦の休業損害は、交通事故が生じなければ得られたはずだという蓋然性の問題ですから、統計や常識を駆使して損害額を認定する他ありません。そのため、賃金センサスという統計調査結果が用いられることになるのです。

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