鎖骨骨折
鎖骨骨折
① 鎖骨骨折と症状
鎖骨骨折は文字通り鎖骨が折れたり損傷することです。
交通事故で多いのは,自転車もしくはバイクと自動車による交通事故の場合です。
自転車やバイクの運転手が,転倒,手・肘・肩などを打撲したときに,その衝撃が鎖骨に伝わり,鎖骨骨折を発症しています。
自動車の場合でも,追突,出合い頭衝突,正面衝突で,運転手や同乗者がシートベルトの圧迫で鎖骨が骨折することもあります。
図でお分かりの通り,鎖骨の横断面は,中央部から外側に向かって三角形の骨が薄っぺらく,扁平(扁平:凸凹がなくひらべったい)して行くような形になっています。
三角形から扁平に骨が移行する部位が鎖骨のウィークポイントです。
鎖骨骨折の80%がその部位で発生しています。
この部位は,より肩関節に近いところから,遠位端骨折(えんいたんこっせつ)と呼ばれています。
その次の好発部位(こうはつぶい:症状が発生しやすい部位)は,肩鎖関節(けんさかんせつ)部です。
また,肩鎖靱帯(けんさじんたい)が断裂することにより,肩鎖関節は脱臼し,鎖骨は上方に飛び上がります。
② 鎖骨骨折の治療方法
鎖骨骨折の治療方法は,手術によらず,ほとんど固定による保存療法が選択されています。
胸を張り,肩をできる限り後上方に引くようにして,クラビクルバンドを装着,固定します。
一般的には,成人で4~5週間の固定で,骨折部の骨癒合(こつゆごう=くっつくこと)が得られます。
鎖骨骨折における後遺障害
① 予想される等級
鎖骨は体幹骨(たいかんこつ)であり,体幹骨の変形として12級5号(12級5号=5,鎖骨,胸骨,ろく骨,けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの)の認定が予想されます。
裸体で変形が確認できれば,認定基準を満たします。
鎖骨の変形では,骨折部に運動痛(=動かすと痛い)があるか,ないか?
ここが重要なポイントになります。
体幹骨の変形による12級5号では,骨折部の疼痛も周辺症状として含まれてしまいます。
つまり,疼痛の神経症状で12級13号が認定されそれだけで終わりです。
併合11級となることはないのです。
痛みがなければ,変形で12級5号が認定されても,逸失利益のカウントはありません。
逸失利益(稼働能力の低下により予想される収入減)がカウントされないと賠償額も低くなります。
しかし,運動痛が認められていれば,10年程度の逸失利益が期待できます。
変形に伴う痛みは,鎖骨骨折部の3DのCTスキャンの撮影で骨癒合状況(=骨のくっつき具合)を明らかにして,立証しています。
② 可動域制限について
鎖骨の遠位端骨折部の変形により,肩関節の可動域に影響を与えることが予想されます。 そうすると,鎖骨の変形以外に肩関節の機能障害が後遺障害の対象となります。
そうすると,骨折部位の変形を3DのCTスキャンで立証しなければなりません。 左右差で,4分の3以下であれば,12級6号が認定され,先の変形による12級5号と併合され,併合11級が認定されることになります。
部位 | 主要運動 | 参考運動 | |||||
肩関節 | 屈曲 | 外転 | 内転 | 合計 | 伸展 | 外旋 | 内旋 |
正常値 | 180° | 180° | 0° | 360° | 50° | 60° | 80° |
8級6号 | 20° | 20° | 0° | 40° | |||
10級10号 | 90° | 90° | 0° | 180° | 25° | 30° | 40° |
12級6号 | 135° | 135° | 0° | 270° | 40° | 45° | 60° |
主要運動が複数ある肩関節の機能障害については,屈曲と外転+内転のいずれか一方の主要運動の可動域をみていきます。
健側(けんがわ:右側か左側の障害のない健康な状態の方)の2分の1以下に制限されているときは,肩関節の機能に著しい障害を残すものとして10級10号の認定が予想されます。
同じく,4分の3以下に制限されているときは,肩関節の機能に障害を残すものとして12級6号が認定が予想されます。
- 12級6号=1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
- 10級10号=1上肢の 3 大関節中の 1 関節の機能に著しい障害を残すもの
屈曲と,外転+内転が,切り離して認定されていることに注目してください。
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