大腿骨転子部・転子下骨折
大腿骨転子部・転子下骨折
従来は関節包の内側骨折を大腿骨頚部内側骨折,関節包の外側骨折を大腿骨頚部外側骨折と2つに分類していたのですが,最近では欧米の分類にならって,関節包の内側骨折を大腿骨頚部骨折とし,関節包の外側骨折を大腿骨転子部骨折,大腿骨転子下骨折と3つに分類しています。
大腿骨転子部骨折は足の付け根部分の骨折であり,交通事故では自転車・原付VS自動車の衝突で,自転車・原付の運転者に多発しています。
高齢者の転倒では橈骨遠位端部,上腕骨近位端部と大腿骨頚部・転子部の骨折が代表的です。
転子部・転子下骨折では,事故直後から足の付け根部分に激しい痛みがあり,立つことも,歩くこともできません。骨折の転位が大きいときは膝や足趾が外側を向き,外観からも変形を確認できます。
レントゲン撮影で大腿骨転子部に骨折が見られ,確定診断となります。
安定型,不安定型のどちらであっても早期離床を目的として,ほとんどで,手術が選択されています。
早期の手術,早い段階からリハビリテーションで,起立,歩行ができるように治療が進められています。
大腿骨転子部骨折は,頚部骨折に比べて血液供給のいい部位であり,骨癒合は比較的順調です。
安定型では手術侵襲の少ないエンダー法ですが,転位が激しいときはCCHS固定により,手術が実施されています。
大腿骨転子部・転子下骨折における後遺障害
股関節の機能障害と痛みが後遺障害の対象です。
転位の少ない安定型の骨折で,被害者が若年者であれば後遺障害を残しません。
しかし骨折の形状,骨癒合の状況によっては,機能障害や痛みの残存が予想されます。
傷病名で後遺障害等級が決まるのではなく,骨折の形状とその後の骨癒合,そして症状固定時期が重要なポイントになります。
昭和50年頃は人工関節の材質としてポリエチレンが使用されており,短期間での摩耗や置換後の骨との緩みが問題となっていました。しかし現在では,材質は超高分子量ポリエチレン,骨頭についてはセラミックが使用されており,耐久性についても15~20年と報告されています。
そこで自賠責保険は,人工関節置換の等級を8級7号から10級11号に格下げしています。
将来人工骨頭や人工関節の再置換が必要となったとき,労災保険の場合は再発申請でこれを認める傾向にあるようです。 この点に,変更はありません。
人工関節では,脱臼予防の観点から関節の可動域には一定の制限が指導されます。
結果,股関節の可動域が2分の1以下の制限となれば,8級7号が認定されます。
ただ,破壊的な骨折でもない限り,2分の1以下になることは,おおよそ考えにくいです。
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